軍艦島(端島) ‐長崎県‐

空から見た軍艦島 長崎 軍艦島

訪れた日:2013年1月

島の本当の名前は端島(はしま)。
かつては海底炭鉱によって栄えていたが、閉山とともに無人島となった。
横から見ると軍艦によく似ているのでこう呼ばれるが、上から見るとこの通り空母のよう。

建物の崩壊が進んでいて長らく立ち入り禁止だったが、見学ルートが整備されて、2009年4月から観光客が上陸可能となった。
軍艦島に興味をもってからほぼ20年経って、ようやく行くことができた。

船に乗る前まで雨が降っていたが、島に着く頃には運良く止んでくれた。

 

軍艦島上陸 上陸して最初に写した写真。
上陸した途端に島の重々しい雰囲気に息をのまされる。
コンクリートの廃墟は、上陸してきた侵入者たちを冷たく見下ろしているようだ。

 

軍艦島第2見学広場 第2見学広場より
レンガの建物は総合事務所。
崩れたこの建物のレンガでさえ、どこをみてもモノクロ写真のような見学コースの中では色鮮やかに感じられた。

 

軍艦島の見学通路から 薄いグレーの空とまだ水を含んだコンクリートが、廃墟となった島をいっそう不気味に見せる。

 

30号棟 第3見学広場
正面の30号棟は日本初の鉄筋コンクリート造高層アパート。
軍艦島の人口は、最盛期には5千人を超えていた。

上陸前には、今は廃墟になったとはいえ、世界最大の人口密度だったかつての活気や賑わいを感じ取る事ができるのではという期待があったのだが、来てみて完全に裏切られた。
ものを言わぬ廃墟と冷たい海風が、過去に思いを馳せることを許さないかのようだ。
街が死ぬとはこういうことかと思わされる。

 

端島小中学校 小中学校
いつ倒壊してもおかしくないほど危険な状態らしい。

 

軍艦島の高台へ続く道 高台へ続く道も一部が崩れているのが見える。

 

軍艦島の東側 見学コースのある島の東側は、炭鉱関連の設備があった場所で人が暮らした建物はあまりない。
「街」はあの高台の向こう側だ。

 

軍艦島から見た海 島の回りは堤防に覆われているので、意外にも見学コースから海はあまり見えない。

 

軍艦島を離れる船上から 島を離れる船上から

別の船が桟橋に接岸するのが見える。
軍艦島上陸ツアーは5社ほどの船舶会社が行っているが、正月のこの日は運休のところもあったので接岸する船は少ない方だろう。
小学生未満の子供を上陸させてくれない(船内待機させる)会社もあるので、子供連れだと選択肢は少なくなる。

ちなみにこの日は、「軍艦島コンシェルジュ」という会社にお世話になった。
消去法で選ぶことになったのだが、結果的には満足できた。

 

軍艦島の北側 島の北側
白い建物は上陸時にも見えた小中学校の反対側。
ここからみると軍艦というより海に浮かぶ要塞に見える。
どちらにしても異様な雰囲気があることに違いはない。


 

揺れる船 島の周辺では船はとにかく揺れる。
カメラを構えても被写体がフレームから外れてしまう。
片手で手すりにつかまりながらシャッターをきる。
しかも風が冷たくて寒い。
おとなしく船内にいれば寒くはないのだが・・・

ただ、この日はこれでもかなり波が静かな日なのだとか。

 

軍艦島の北西 船が徐々に島の西側にまわりこむ。
軍艦島の「街」が見えてくる。

 

軍艦島西側の堤防 人が住んでいた西側の方が波が荒く堤防も高くなっている。
かなりの高さがあるのだが、上陸して建物を破壊した波や風の力を思い知らされた後では、これっぽっちの盾を頼りにしてよく人が住んでいたものだと思ってしまう。

 

軍艦島の高層住宅 西側の高層ビル群
新しいものでも1950年代には作られている。
高度経済成長が始まる前に、これほどの街並が日本にあったというのが驚き。
その時代、日本一の高層住宅群は、東京でも大阪でもなく炭鉱の島にあったのだ。

それが今では巨大な廃墟となって、自然の力で徐々に崩壊させられている。

 

軍艦島の西側全容 軍艦島の西側全容
この方向から遠ざかって見たときがもっとも「軍艦」らしく見える。

島の景観を楽しんでいたはずなのに、島を離れるとどういうわけか少しほっとする。
上陸したときから、なんとなく、この島は人間を嫌っているという気がしていたからだろう。

過去にこの島において、人間は「やってはいけないこと」をやってしまったのではないだろうか。
それが、海底の石炭を掘りおこしたことなのか、島を埋め立ててたくさんの人が住みついたことなのか、それとも閉山した島を捨てて全員が去ったことなのかは分からない。
島に行ってみてはじめて、島なのか海なのか、とにかく人間の力を凌駕する「なにか」の静かな怒りのようなものに気付かされた。
おそらくこの島の建物は、波風に打たれていずれ倒壊して無くなるだろう。
そうなる前に見に行く事ができてよかったと、こころから思う。

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